会社を経営したり新規事業で事業を任されたりすると、どの業務を自分たちで行なって、どの業務を外注するかは極めて重要な意思決定であることを気づくはずです。

事業運営の基本は、”本体を軽く”なので、できるだけ自分で資産を持たない方が良い。特に過剰在庫は事業を悪化させる主要因になります。ただ、在庫を持たず、資産を持たずということを選択し過ぎると、リスクは減りますが他社と差別化が難しくなってきます。何もかも外注すれば、会社が空洞化してしまいます。それでは、新規参入によるレッドオーシャン化が進んでしまったら、事業が成り立たなくなります。

この"持つ”、”持たない”のバランスがなかなか難しくて、日々事業運営では悩みの種なのですが、これが正解というものはどこにもなくて、競合環境、自社のリソースなどを鑑みて、総合的にリーダーが良い塩梅を判断せねばなりません。

バブル崩壊以降、ここ30年くらいの日本のビジネスを見ると、リスク回避的になっているようで、”持つ”ビジネスより、”持たない”ビジネスの方が流行りだと思います。実際、大手の食品メーカーや電気機器メーカーは、自社工場ではなく、OEMで生産を進めてきました。中には、自社でほとんど製品を作っていない大手メーカーもいます。

そうなるとどうなったかというと、セブンイレブンなどの流通側のプライベートブランドの台頭です。実際、メーカーはもはや自社でプロダクトを作っていないのですから、流通側はメーカーのOEM先を見つければメーカーと同等のものが作れます(実際のところは、品質管理のレベルが流通とメーカーではかなり違ったりもします)。

メーカーの多くはこのプライベートブランドに悩まされているのですが、当然自分で作らないことを選択したのですから、自ら招いてしまったこととも言えます。根本的な解決策は、自社でリソースを"持つ"ことの回帰なのですが、そのようなリスクをとって工場を新設するなどの決断をする経営者はほとんどいません。すぐには結果は出ないですから、短期的には経営指標も悪化します。結局は、マーケティング手法を変える、D2C事業の実施などのインパクトが必ずしも大きくないことを五月雨式に行うことになってしまいます。

さて、2026年からは経営にはプラスして、”どこまでをAIに任せるか”というのが大きな経営イシューとなると思われます。現在、AIというと、”AIで仕事がなくなる”とか、”これからはAIエージェントの時代”のようなことが言われていますが、本質的な話ではない。事業、タスクレベルで、”どこまでをAIに任せるか”、”どこまでは任せないか”を経営として選択しなければならないその時です。

AIに仕事を任せると確かに仕事は早く、ある程度の正確性が保たれます。ただし、AIは一般的な正解に集約されるように動きますから、AIで事業を他社と差別化することは難しい。AIに任せれば任せるほど、仕事はAIに蝕まれコモディティ化し、空洞化していきます。AIエージェント導入やAIの部署を作るより前に、経営側で”どこをAIに任せないか”をしっかり決めないと、本当に大事な部分まで差別化できなくなり、一度ぽっかり空いた穴は元に戻せなくなります。

自社で生産をしないと決めたことで、メーカーが流通側のプライベートブランドに悩まされているのと同じことがAIの分野でも将来起こるのは間違いないです。2026年、今ここでの"そこはAIには任せない"という選択が今後の事業の運命を決めると言っても過言ではありません。