私がNTTデータ在籍時には、クライアントへのAI、データのコンサルティング&実装案件をシニアマネージャーとして主導していました。ただ、ここのところのAIコーディングをフル活用してみると、、、

大手のシステム会社だと、5人体制で半年かかる(いやもっとかかるかも)だろうと思われる開発案件が、1人で3週間ほどでできてしまいました。

40倍の効率UP。いやもうシステム会社は必要ない、と思ったのがマニューバ株式会社設立のきっかけです。

このような経験談を書くと、「すわ!もうSEは要らなくなるのか」と思う方もいらっしゃるかもしれません。ただ、職種としてのSEが要らなくなるということは、おそらくですが当分ないと思います。

ルース・シュウォーツ・コーワン(Ruth Schwartz Cowan)問題というものがあります。コーワンさんの著書『More Work for Mother(1983年)』の中で、このような指摘をしています。1870年以後の約100年間、家庭の仕事の機械化が進んだにも関わらず、家政担当者(この当時は多くは母親)の家事の時間は減っていない。20世紀の初頭は週52時間、1960年の終わり頃で週56時間、1987年で週50時間となっており、洗濯機やミシンなどの便利グッズが普及したのも関わらず、お母さんの仕事は減っていない。

家事の時間が減っていない要因は様々考えられおり、子供の数が減ったことで年長の子供が年少の子供を面倒を見ることがなくなった、衛生環境を整える必要性が社会的に認知されより家庭内を清潔にしなければならなくなった、家政婦を雇う家庭が減った、など。 様々な要因によって機械化による効率化が相殺されてしまった。

家庭の機械化だけでなく、他にも同じような事例はたくさんあります。カメラの登場によって芸術家は要らなくなると思われたがその後に写真では表現できない印象派やキュービズムなどの手法が開発されアートが発展した、パソコンが普及してメールや表計算ソフトが使えるようになってもホワイトカラーの業務時間は変わらなかった、など。

AIによる効率化も同じように、なんやかんやの要因により相殺されてしまってSEの需要がゴソッとなくなることはない。なんやかんやとは、AIでより詳細にセキュリティチェックができるようになってセキュリティ対応が増える、事業会社がAI利用を契機としてSEを内製化しようとする需要が増える、AIをチェックする要員が増える、などなどが考えられます。

ただ、実際には企業の中の数人(なんなら1人でも良い)にある程度のエンジニアリングスキルがあればSE、エンジニアなしの事業運営は可能であることは間違いありません。”なんやかんやの要因”に影響されず、SEを採用しないで事業を運営する「SEレス」というモデルを採用する新興企業は増えると思われます(我々マニューバ株式会社もそのモデルです)。

SEの需要は減らないと思われる(先のなんやかんやの要因で効率化が相殺される)が、それなりのエキスパートがAIを使えばSEなしでの事業運営は十分に可能です。SEをわざわざ採用するメリットはないので、SEなしで事業成長を目指す会社は確実に増えます。 そして、SEという固定コストを持っていない”軽い”状態で事業を運営する会社が、多くのSEを抱える”重い”企業を駆逐するケースがチラホラ出てくると思われます。

私としては米国のシューズメーカーNIKE社がファブレス(工場を持たない)というモデルで、90年代から2000年代に成長し他社からシェアを奪ったのと同じ構図になりそうな雰囲気を感じています。実際、現在世界の企業の時価総額のTop3のうち2社、AppleとNVIDIAはファブレスのモデルで、”最初から勝てる状態”を作って後出しジャンケンのように競合を駆逐してきました。それくらいファブレスというモデルは破壊力がありました。 SEレスの場合も同じようなストーリーになるのでは。