マーケティングの一丁目一番地で最も大事なのはリサーチです。ペルソナやら、インサイトやら、N1やら、ジョブ理論やら、顧客理解や体験設計の話は色々ありますがが、結局はユーザーのリサーチがないところに芯を食ったマーケティングは不可能です。
このリサーチをAIで、みたいな事例やソリューションが出てきているのですが、「?」とおもわれるものが散見されます。
例えば、「AI同士で会話をさせて、グループインタビューを行い、インサイトを深掘りする!」みたいなやつが大手のSIerで事例としてリリースされていたりするのですが、完全に消費者、生活者を冒涜しているとしか思えません。
リサーチの会社を経営していたことがあるのですが、その時にかなり学んだことがあります。一人一人のユーザーは独自の膨大な物語を紡いでいる人たちです。街でたまたますれ違う人でも、かなり複雑な経験の中で毎日の行動をされています。仕事、家族、子育て、友人関係などなど、非常に複雑な状況の中で、個々がストレスフルに生活しているのが現代人です。
企業というのは、一般の方達のお話をお聞きしたり、一緒に行動を共にする中で、個人ではできない資本によって、そんなストレスを解決できる元気玉のようなプロダクトやサービスを提供することが使命だと考えているですが、そこをAIに任せて、しかも聞く相手がAIというのは、どういうことでしょう。そんなことをAIに任せてしまったら、それこそ企業活動は換骨奪胎です。
確かにリサーチは骨の折れる作業なので、AIでサクッと、と思う気持ちはわからなくないのですが、こんな企業活動、マーケティングのファンダメンタルな部分までAIでやってしまっては仕事に魂が抜け落ちてしまいます。他者と差別化すべきところなのに、差別化ができない。レストランが冷凍食品を使って客に料理を提供するようなものです(ちなみに、私は子供たちのお弁当を作るときに冷凍食品をとても便利に使わせていただていますので、冷凍食品をディスっているわけではありません)。
この前、ある会社の社長に会って、こんなことを聞きました。「最近、広告代理店もAIを使って提案書を持ってくるようになった。確かに見た目は綺麗に見えるけど、提案に魂がない」。AIが得意なのは、ある一点の正解に集約しようとする最適化です。AIに頼れば頼るほど、終点は一点に絞られます。
日本の素晴らしい企業で本当に大事な部分までAIに任せてしまうようなことがないように、我々もビジネスしながら気をつけていきたいと思っています。